1型糖尿病とは
糖尿病の全体の約5%が1型糖尿病とされます。1型糖尿病は、2型糖尿病のように生活習慣が原因ではなく、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンの分泌が滞って発症します。
1型糖尿病の原因
免疫の異常によって膵臓のβ細胞が破壊されることが原因です。なぜ、免疫異常が生じるのかは分かっていません。
1型糖尿病の種類
劇症1型糖尿病
発症から約1週間で薬物療法としてインスリンの補充が必要な程、急激に発症し病気が進行します。それが不可能な場合は、糖尿病ケトアシドーシスなど重症化するリスクが上がります。最も急激に発症するため、検査を数週間前に受けてもHbA1c数値は低めに出ます。
急性発症1型糖尿病
1型糖尿病のうち最も多く見られるタイプで、発症してから数カ月でインスリン補充が必要となります。ハネムーン期と言って、発症後も残存のインスリン効果で症状が改善することがありますが、その後はインスリン補充が欠かせません。
緩徐進行1型糖尿病
ゆっくりとインスリンの分泌が減少するため、発症後も2型糖尿病のようにインスリン注射を使用しなくても血糖値をコントロールできます。半年から数年ほどかけて血糖値が上がります。この場合、内服薬は膵臓に負担をかけるため内服薬ではなく、インスリン注射など膵臓を保護できる治療を行います。
1型糖尿病の診断基準
血糖値・インスリン分泌能・尿中のケトン体の有無・自己免疫反応などを検査して診断します。
診断基準 | |
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劇症1型糖尿病 |
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急性発症1型糖尿病 |
※それでも診断できない場合は、時期をあけて再評価を行う |
緩徐進行1型糖尿病 | 進行の経過でGAD抗体またはICA膵島細胞抗体が陽性 |
1型糖尿病の治療
薬物療法(インスリン療法)
1型糖尿病は、インスリン療法が必要です。特に、劇症1型糖尿病や急性発症1型糖尿病は、インスリン療法を行わないと命を落としてしまう恐れがあるため注意が必要です。インスリンは、自己注射で補充していきます。当院では、糖尿病専門医が自己注射のやり方や注意点を丁寧に説明しております。不明なことがありましたら、何でもご相談ください。
食事療法
患者様に負担のない食事療法をご提案しております。年齢や性別、運動量などからエネルギー適正量を明確にしながら、バランスの取れた食事をお勧めしております。当院では、管理栄養士や糖尿病専門医などが連携し協力しながら提案しております。
よくある質問
1型糖尿病になりやすい人はどんな人ですか?
1型糖尿病は免疫異常が主な原因のため、どんな人がなりやすいかということはあまり関係ありません。このため、2型糖尿病のように生活習慣によってなりやすくなるということもありません。発症するのは、年代として小児から青年期がほとんどです。
1型糖尿病になっても、妊娠・出産はできますか?
1型糖尿病になっても妊娠や出産はできます。ただし、合併症を起こすリスクが高いため、血糖コントロールは必要になります。
1型糖尿病はどのように病気が進行しますか?
血糖コントロールを厳密に行うことで、合併症を避けることができます。適切な治療を行えば、糖尿病でない人と同じように通常の生活を送ることが可能です。ただし、適切な血糖コントロールをしないでいると、糖尿病網膜症などの合併症を起こして失明に至ったり、糖尿病腎臓病で透析になったり、糖尿病神経障害で足の切断に至る恐れがあります。また、動脈硬化が進行するほか、がんや認知症など重篤な疾患を招くことがあるため注意が必要です。
1型糖尿病も2型糖尿病同様に食事療法や運動療法は必要ですか?
食習慣が乱れていたり、運動習慣が定着せずに問題がある場合は、インスリン療法だけを行うことで低血糖となることがあります。正しい生活習慣が身についている場合は、食事療法や運動療法は必要ありません。
インスリン注射は痛いですか?
ほとんど痛みを感じません。予防注射よりも極細の針を用いて浅く刺すため、多くの方が痛みを感じないと言います。インスリン注射の方法は、お一人おひとりに丁寧にご説明し、指導しております。